動き
新しい科学としての被害者学
中田 修
1
1都立梅ヶ丘病院
pp.436-437
発行日 1959年6月15日
Published Date 1959/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200107
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これまで,犯罪者がもつぱら科学的研究の対象とされ,被害者の人格の研究がなおざりにされていた。ただわずかの学者によつて,殺人における被害者の重要性がみとめられたにすぎない。
最近,イスラエルのエルサレムのB.Mendelsohn氏が被害者の人格研究の重要性に着目し,被害者学Victimologieという新しい学問を提唱した。同氏の論文はRevuefrangaise de Psychanalyse,Janvier-Février,1958に掲載された。同氏より吉益教授への書信によると,最近ヨーロッパ諸国にVictimologieのイデーが漸次拡まつて根をはりつつあるという。たとえば,VexlliardとMelotの両氏はフランスの"Combat"紙に被害者学に関するいくつかの論評を掲載した。あるいは,犯罪学の欧州班(Groupe Européen de Criminologie)および「オランダ=ベルギー犯罪学者新連盟」はそれぞれ会議の議題としてこの問題をとりあげた。ブリュッセル大学の犯罪学のゼミナールは1学期にわたつてこの問題を研究し,イタリアのジェノア大学法学部は1大学院学生の学位論文のテーマとして被害者学を課した。さらに,Mendelsohn氏自身はさらに"Revue de Droit Pénal et Criminologie"(Bruxelles)から依頼されて論文を寄せている。
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