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原典紹介:統合失調症の1亜型
Hoch PHらは1949年に「偽神経症型の統合失調症」1)を,次いで10年後の1959年に「偽神経症性統合失調症の診断」2)を,さらに1962年には「偽神経症性統合失調症の経過と転帰」3)という論文を発表した。これらのうち,第1論文はその概念を提唱した,原典中の原典であり,第2論文は診断を,第3論文は経過と転帰を論じたものである。
この偽神経症性統合失調症は,その当時統合失調症と神経症の境界に位置するものとされていた境界例borderline caseの中からある一群を,その名称にあるように表面的には神経症の形をとっているがその実,統合失調症の1亜型であるとして取り出し,提唱されたものである。統合失調症であるとの根拠を確実にすべく,第2論文ではE Bleulerの基本症状に沿う形で思考と連想の障害,情動制御の障害,感覚運動機能の障害と自律神経機能の障害が1次臨床症状として挙げられ,また統合失調症であることを実証すべく,第3論文では109症例の5~20年の追跡調査において20%の患者が短期間の精神病的エピソード(小精神病micro-psychosis)を示し,かつそのうちの半数が定型的な慢性統合失調症に陥ったことが述べられている。上記のように疾患論的には統合失調症であり,また診断に際しては統合失調症の基本機制すなわち1次臨床症状の存在を明らかにすることが必要とされているものの,Hochらが「診断学的に最も重要な症状は,筆者らが汎不安,汎神経症と呼んでいるものである」と述べて診断上最も重視したのは,第2論文では2次臨床症状とされている汎不安pan-anxietyと汎神経症pan-neurosisである。以下,この2種の症状についてのHochらの原記載を第1論文から引用する(訳文は清水1)による)。
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