書評
野村総一郎,中村 純,青木省三,朝田 隆,水野雅文 シリーズ編集 和田 清 編―《精神科臨床エキスパート》―依存と嗜癖―どう理解し,どう対処するか
齋藤 利和
1
1札幌医科大学・神経精神医学
pp.160
発行日 2014年2月15日
Published Date 2014/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102660
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依存と嗜癖については歴史的にさまざまな意味付けがなされてきた。これまではICD-10(WHO診断基準),DSM-Ⅳ(米国精神医学会診断基準)では1977年のWHOが示したアルコール依存症候群の概念の影響を強く受け,両診断基準の中に精神依存を中心とする依存症の診断基準が示されていた。
しかし,最近出版されたDSM-5では乱用と依存とで構成されていた物質使用障害から乱用,依存の概念は消失し,乱用3項目,依存7項目の診断項目に「渇望」の項目を加えて11項目の診断項目からなる物質使用障害としてまとめられている。また大項目は“Substance-Related and Addictive Disorders”となり,ギャンブル嗜癖がそれに加えられた。インターネット嗜癖も近い将来加えられる可能性がある。これはDSM作成グループの依存から嗜癖に診断基準を修正し,物質に限らず,ギャンブルやインターネットなどの行為嗜癖を含めて,より広く診断の対象を広げたいという意向があることがうかがえる。第1部「総論」を担当している宮田,廣中直行の言葉を借りれば,「物質だけではなく,嗜癖行動を起こす対象物を広く包括し,社会的障害も疾患概念に含み,疾患の閾値を下げる(より広く診断できる)ようになったといえる。このことが,依存と嗜癖の違いになるのであろう」ということである。つまり,嗜癖概念は依存概念より広い分野を包含する,より現実的な,実践的な概念ということになる。
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