書評
野村総一郎,中村 純,青木省三,朝田 隆,水野雅文 シリーズ編集 水野雅文 編——《精神科臨床エキスパート》—重症化させないための—精神疾患の診方と対応
樋口 輝彦
1
1国立精神・神経医療研究センター
pp.911
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200018
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国は「健康寿命の延伸」を健康日本21の目的の一つとし,さまざまな施策を展開している。健康長寿を実現するために最も大切なことは「病気の予防」であり「早期発見・早期治療」であろう。これは身体疾患だけでなく精神疾患にも当てはまる。病気の予防がいかに重要かについては,これまでにも保健の観点からさまざまなメッセージが発信されてきた。しかし,メンタルヘルスの領域では,予防医学は概念的には受け入れられても,具体的に何をどうすれば予防につながるのか,早期発見に至るのか,その道筋が見えないところがあった。最近,早期介入をすることが病気の予後を改善すること,治療に至るまでの時間が短ければ短いほど治療効果が高いことなどに関するエビデンスが集積されてきたことから,漠然としていた「予防」が中身を伴って語られるようになってきた。
本書は以上のような今日的時代背景の中でまとめられた時宜にかなった書籍である。病気は突然始まるいわゆる急性の疾患(代表例は感染症)と,発症する前一定期間,前駆状態と呼ばれる非特異的な症状を示し,そのうちその疾患の本来の症状を呈する疾患に分かれるが,精神疾患の多くは後者に属する。この前駆状態は疾患特異的でないため,注意が向きにくく早期介入が困難であった。しかし,本書ではこの時期(前駆期)に焦点を絞り,これまで積み重ねられてきたエビデンスを総説することで早期介入のプロセスを明示した。
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