書評
―中村 純 編案,野村総一郎,中村 純,青木省三,朝田 隆,水野雅文 シリーズ編集―《精神科臨床エキスパート》―抗精神病薬完全マスター
神庭 重信
1
1九州大学大学院・精神病態医学
pp.953
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102274
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新規の抗精神病薬が出そろった観がある。通称として,第2世代とも非定型とも呼ばれるこれらの薬剤は,従来の抗精神病薬と比べて,パーキンソン症候群,ジストニア,遅発性ジスキネジアが出にくいことは確かである。これは,統合失調症の治療が,チーム医療となり,病院から地域へと広がり,患者さんの社会復帰を実現させていく上で,極めて好都合なことであったと思う。
しかしながら一方で,東アジア6か国における統合失調症患者の処方調査(2001年7月時点)によれば,向精神薬数,抗精神病薬の処方量ともに,日本が断トツ1位である。多剤・大量療法の問題がマスメディアによる辛辣な糾弾を受け,厚生労働省から「向精神薬等の処方せん確認の徹底等について」と題された課長通知(2010年9月)が出されるに至っている。平成25年度から始まる地域医療計画で実施される医療連携の中でも,抗精神病薬の単剤化率が病院機能を測る指標として言及されている。すでに睡眠薬の併用数が3剤を越えると診療報酬が減額されることが決まったと聞く。このような“外圧”を受けて医療を変えざるを得ない状況に至ったことは,精神医学に身を置くものとして,不名誉なことである。
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