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はじめに
大災害が発生すると,直後から始まる救助・捜索活動,救急医療活動,避難所などでの支援活動に,さまざまな立場で多くの人々が参加することになる。その中には,消防士,警察官,自衛隊員,海上保安官などの職業的災害救援者や,DMATに代表される救急医療関係者などのように訓練された支援者もいれば,ボランティアで瓦礫の撤去にあたる人々のように背景も経験もバラバラの集団もある。また,復興期に入ると生活復興のための行政的業務,生活再建を促進するためのきめ細かな支援活動,被災者の健康を維持するための保健活動などに,多くのマンパワーが長期に必要になる。
これらの支援者は,活動を通してさまざまな精神健康上のリスクに晒されることになる。直後の救援活動では,長時間の過酷な状況下での活動,悲惨な現場を見ること,自分自身が生命の危機に直面すること,同僚が死亡したり負傷すること,遺体,とりわけ子どもの遺体を扱うこと,十分な救助活動ができないことなどが大きなリスク要因となることが知られており,惨事ストレス(critical incident stress;CIS)とよばれている4)。また,被災者の体験や表出される感情に触れること,成果の出にくい業務に長時間従事すること,被災者やメディアから批判されることなどがストレス要因となって精神的に疲弊してしまうことは,代理受傷(vicarious trauma)や共感疲労(compassion fatigue)と呼ばれている。
本稿では,支援者が受ける心理的影響について,わが国ではどのように認知され,対策が立てられてきたのかを概観した後に,東日本大震災での現状と対策を筆者が関わった活動を中心にまとめる。
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