書評
拘置所と刑務所における精神科医療サービス(第2版)―米国精神医学会タスクフォースレポート
西山 詮
1
1錦糸町クボタクリニク
pp.1041
発行日 2005年9月15日
Published Date 2005/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102493
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
アメリカ精神医学会(APA)は多方面にわたって活躍している。議会に出向いて活発にロビー活動をし,裁判所に対しては法廷の友書簡(amicus curiae brief)を送って精神科医療における守秘義務の重要性を論じ,規模の大きなタスクフォース(委員長R Spitzer)を構成してDSM-Ⅲを作成し,非常事態(たとえばヒンクリー事件)に際しては精鋭数人からなるタスクフォース(委員長H Roth)を発足させ,迅速な仕事によりAPAの声明文を作成し,学会の見解を世に問うことができた。この書も6人の精鋭からなるタスクフォース(委員長HC Weinstein)の報告書で,矯正施設における精神科医療のあるべき姿を,法務省に任せきりにせず,現実を見据えて述べたものである。
この報告書がすぐに役に立つのは拘置所と刑務所に勤める精神科医であろうが,そればかりでなくおよそ強制的環境(措置入院,医療保護入院)において行われる精神科医療に携わるあらゆるスタッフにものを考えさせる。特に,措置入院患者に対する医療行為は権力的作用による強制的措置管理のもとで行われるのであり,公権力の行使とみなされている。そして今年から施行される予定の「心神喪失者等医療観察法」の下に行われる医療行為もそうである。精神保健福祉法および上記新法下の多少とも強制的な治療に参加するスタッフにとって,重要なガイドラインを本書は提供するに違いない。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.