書評
PTSD治療ガイドライン―エビデンスに基づいた治療戦略
中川 誠秀
1
1神経研究所付属晴和病院
pp.1039
発行日 2005年9月15日
Published Date 2005/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102492
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本書は国際トラウマティック・ストレス学会理事会が設置した「PTSD(外傷後ストレス障害)治療ガイドライン特別作業班」により作成されたものである。その領域のエキスパートにより作業班が組織され,PTSDの治療方法が9種に大別され(心理的デブリーフィング,認知行動療法,薬物療法,児童思春期の治療,眼球運動による脱感作と再処理法,集団療法,力動的精神療法,夫婦療法と家族療法,芸術療法),さらに,おのおのの項目に関し,第Ⅰ部では網羅的文献レビユーによる治療へのアプローチ,第Ⅱ部では治療ガイドラインとして構成され,詳述されている。そのため,多忙な臨床家が治療の全体像を鳥瞰する際に大いに役立つ。PTSDとは,今や衆知の用語となった。PTSDに関連する学術的研究は,Medlineで検索するとReviewでも1,424例,総計9,509例(2005年6月20日)と多数検索され,世界的・時事的なテーマであることがわかる。
本邦でも,破壊的・ショッキングな事件として,阪神・淡路大震災,オウム地下鉄サリン事件,新潟県中越地震と印象に新しく,さらにDV(Domestic Violence),その他の犯罪(ストーカー,性的犯罪など)被害者への精神的ケアに対する社会的な要請を背景に,2002年3月に日本トラウマティック・ストレス学会が設立された。本書の訳者はその学会の重鎮であり,PTSD研究で著名な飛鳥井望氏を初めとした,東京都精神医学研究所のメンバーである。
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