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アメリカの児童精神医学については,すでに高木,牧田両先生,その他の方々が数年来紹介をして来られました。したがつて,私がここでのべますことは極力前者の方々との重複をさけるよう心掛け,また統計的なことは一切はぶき,おもに最近の趨勢,そのおもだつた研究方向という点に重点を置きたいと思います。
すでに“精神衛生研究第3号1)”および“精神衛生資料第6号2)”において,高木先生がアメリカ児童精神医学,および児童指導クリニックChild Guidance Clinicについての紹介をされ,その中でのべていられますように,アメリカの児童精神医学は,William Healy以来現在まで約50年を経て児童指導クリニック,病院内の精神科の児童部などを中心にして,主に力動的精神医学を基礎にもつて発展してまいりました。どの分野においても専門化する傾向の顕著なアメリカでは,児童精神医学においても神経学的,器質的な問題は,たとえば神経科クリニック,てんかんクリニックなどといつた別個の部門,および人々の専門になつてしまう傾向が強く,いわゆるアメリカでいう児童精神医学者の取扱う対象にはあまりなつておりません。この点はヨーロッパ諸国,またわが国と違う点でありますが,このように判然と専門化され,つまりdynamistsとneurophysiologistsとかneurochemistsとかいつた人々の間の交流が少いという点についての反省は,アメリカ国内にも起こつてはおります。たとえば,1958年のAmerican Association of Orthopsychiatryの総会で,“Basic Science and the Future of Orthopsychiatry”と題した論文の中でワシントンの児童精神科医,Dr. Reginald S. Lourieが,いま挙げました問題をとりあげ,1つの場所で共通の用語を使つて前述の2者が協同して働けないものだろうかといつているのであります。しかし,現在のアメリカ児童精神医学を代表するものは,やはり個人と環境の相互関係を追求する方向であり,治療の基礎となるものは,この考えを基とした精神療法であると思います。
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