巻頭言
PTSD診断と訴訟
黒木 宣夫
1
1東邦大学佐倉病院精神科
pp.116-117
発行日 2003年2月15日
Published Date 2003/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100632
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はじめに
平成10年6月横浜地裁にてPTSD診断のもとにわが国で初めて民事訴訟事案に損害賠償が認められたが,その事案の診断に関しては,専門家,特に法曹界で大きな議論となり,PTSD診断そのものの在り方が大きな問題となった。そして最近では,民事訴訟で途中からPTSDという診断名のもとに,損害賠償の訴訟の請求拡大が行われたり,刑事事件として被害者がPTSD診断を受け,そのために加害者が暴行罪からより重い傷害罪へと罪状が切り換えられる事案が出てきており,PTSD診断をめぐる賠償・補償問題は,今や大きな社会問題となりつつある。現在,この問題は,日本精神神経学会「精神保健・医療・福祉システム検討委員会」,日本産業精神保健学会「精神疾患の業務関連性に関する検討委員会」において検討されている。補償におけるPTSD診断に関する問題点を挙げ,「精神保健・医療・福祉システム検討委員会」では下記の提言をまとめたので後述する。
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