書評
―山内俊雄,小島卓也,倉知正佳,鹿島晴雄 編 加藤 敏,朝田 隆,染矢俊幸,平安良雄 編集協力―専門医をめざす人の精神医学第3版
山下 格
1
1北海道大学
pp.651
発行日 2012年6月15日
Published Date 2012/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102207
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わが国の精神医学,関連分野の総力が結集された成果が一冊に
本書第3版の発刊をこころからお祝いしたい。この本は歴史を背負っている。初版は学園紛争以来の卒後研修の遅れを取り戻すため,精神医学講座担当者会議の54人が執筆し,1998年に刊行された。どこか老教授が新人に講義をする雰囲気がある。その後日本精神神経学会の専門医制度の発足(2005年)に合わせ,専門医が習得すべきminimum requirementsの指針として,現・前教授115人による第2版が2004年に出版された。前版より対象項目を大幅に増やし,教科書的な形式を整えている。そして今回,848ページにわたる第3版が生まれた。執筆には広く各分野の権威130人が参加し,第2版の半数以上の項目で執筆者が交替し,同一人の場合も見直しが行われた。このような経緯からも,本書の内容,目標,存在価値が知られるであろう。差し当たり専門医が研修すべき事項に視点を置いているが,実際にはひろく精神医学の臨床全般にわたる最近の知見とともに,それを支える神経科学,心理学,文化・社会学などの諸側面の研究成果や基礎的理論,さらに精神科救急や安全管理,福祉・法律・職場や学校の精神保健など,身近で実践的な諸問題まで取り上げている。
その意味で本書は,現在わが国の精神医学および関連分野の関係者の総力を結集した成果といえるであろう。その編集・執筆にあたった方々のご努力に敬意を表するとともに,本書が多くの精神科医の書庫の宝となることを願うものである。
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