書評
—倉知正佳 著—“脳と心”からみた統合失調症の理解
篠崎 和弘
1
1和歌山県立医科大学・神経精神医学
pp.965
発行日 2016年11月15日
Published Date 2016/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205273
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優れた総説を探し当てて読むことを若い後輩には薦めています。折々には単行本の精読も薦めますが,英文だと反応が鈍いものです。著者自ら統合失調症の「古典的精神医学と現代の精神医学の橋渡し的役割をはたしているかもしれない」(p.279)とあとがきに記された本書は,精読を強くお薦めする単行本です。また幸いに日本語です。母国語でこの高いレベルの本が読めるのはこの国に生まれた僥倖と言えるでしょう。若い医師たちや,研究をめざす医師はもちろん,臨床で活躍している医師にも,読んでいただきたい本です。
臨床家の中には,研究段階の生物学的知見が臨床に必要か,と疑問を持たれる方もおられるでしょう。それに対する答えはこうです。臨床家は「統合失調症は患者や家族の人生に深い影響を及ぼす。予後良好な疾患にするためには何をすればよいのだろうか」(p.ⅲ)と工夫を凝らしていることでしょう。また統合失調症の全体像が未解明であること,薬物治療が満足できるレベルに達してないことにも歯がゆい思いをされると思います。それゆえ,不完全な知識と技術で臨床をしている,という危うさを熟知しておくことは,専門家としての責任であり,また治療の選択肢を増やしてくれるはずです。この本が「理解」と題されているのはそのような意味もあってではないでしょうか。
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