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シンポジウム 精神医学研究の到達点と展望
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断と治療―15年の歩みと今後の課題
Diagnosis and Treatment of Posttraumatic Stress Disorder: Progress in the Past 15 Years and Next Generation Topics
飛鳥井 望
1
Nozomu ASUKAI
1
1東京都医学総合研究所
1Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science, Tokyo, Japan
キーワード:
Posttraumatic stress disorder
,
Clinical research
,
Japan
,
Diagnostic scale
,
Treatment
Keyword:
Posttraumatic stress disorder
,
Clinical research
,
Japan
,
Diagnostic scale
,
Treatment
pp.1215-1223
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102052
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はじめに
心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder;PTSD)は,米国精神医学会診断基準DSM-Ⅲにより1980年に初めて範疇化された診断概念である。その内容は,災害や深刻な犯罪・事故被害など,生命や身体に脅威を及ぼし,精神的衝撃を与える心的外傷(トラウマ)体験に起因する特徴的なストレス症状群である。以来,現在まで診断概念としてのPTSDは世界各国で広く受け入れられるところとなった。またトラウマがもたらす精神的影響に関する共通の枠組みができたことは,それに関連する心理社会的次元や生物学的次元における精神医学研究の飛躍的進展を導いた。
わが国でPTSDが社会的に広く知られるようになったのは,1995年の阪神淡路大震災を大きな契機としてである。それ以前には,兵士の戦争神経症,事故後の外傷神経症,被災者では災害神経症など個々に診断名が与えられていたものが,わが国でも,PTSDという共通の枠組みが用いられるようになったことで,トラウマによる精神的後遺症の診断評価法や治療ケア技法の発展が促された。その後,現在までのわが国のPTSD臨床研究の進展は着実であり,診断概念としても定着したといってよい。筆者もこの15年間PTSD臨床研究に取り組み,各種の臨床疫学研究,日本語版診断尺度の作成と標準化,そして治療研究へと歩を進めてきた。本稿では,その歩みを振り返り,これまで得られた主な知見を紹介する。
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