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特集 精神疾患における環境要因と遺伝-環境相互作用
心的外傷後ストレス障害(PTSD)における環境要因と遺伝-環境相互作用
-――逆境的小児期体験に着目した検討
Environmental factors and gene-environment interaction in posttraumatic stress disorder(PTSD)
――An examination focusing on adverse childhood experiences
堀 弘明
1
Hiroaki HORI
1
1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部
キーワード:
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
,
遺伝子
,
逆境的小児期体験(ACEs)
,
視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)
,
炎症
Keyword:
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
,
遺伝子
,
逆境的小児期体験(ACEs)
,
視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)
,
炎症
pp.577-582
発行日 2024年2月17日
Published Date 2024/2/17
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28807577
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心的外傷後ストレス障害(PTSD)は,トラウマ体験を経験することで発症する精神疾患である.一方,トラウマを経験してもPTSDを発症しない者もいることから,発症には個人の脆弱性が関与していると考えられ,この脆弱性は遺伝要因と環境要因の複雑な相互作用によって形成されると想定される.そういった環境要因のなかで特に重要なものに,逆境的小児期体験(ACEs)がある.重要なことに,ACEsを有する者とPTSD患者に共通して,視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)の機能異常や炎症の亢進,扁桃体の過活動,海馬の体積減少が示されている.HPA系制御や炎症に関与する遺伝子の特定の多型を有しACEsを受けた者では,PTSD発症・重症化リスクがより大きいことや,ACEsによってHPA系制御に関与する遺伝子のDNAメチル化が変化することも報告されている.これらのことから,ACEsは遺伝要因との相互作用によりストレス応答システムや脳形態・機能の変化を惹起し,それが成人期まで持続することでPTSDの脆弱性が形成されるという可能性が示唆される.
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