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神経心理学に興味を持つ多くの人々に
書評はなぜ存在するのか。答えは明快である。それは,その書評を読んだ人の,その本に対する購入行動の選択に役立てるためである。したがって,書評では結論が重要である。その本を購入すべきか,購入する必要がないか,それをまずはっきりさせることがなければ,書評の存在意義はない。したがって,書評を依頼された評者は,購入すべきという結論に達し得る本の書評だけを引き受けることになるのが普通である。なぜなら,書評を頼まれながら,その本は買うに値せず,という書評を書くというようなことは,まず仁義にもとるという点からも,あり得べからざることなのである。すなわち,私が本書の書評を書くことを引き受けたということは,この本が,1人でも多くの方によって購入され,読まれ,そしてさまざまな議論を巻き起こす源になってほしいと思うからである。
近代医学を支えてきた基盤は科学的な思考であり,その中心にあるのは,論理性,客観性,普遍性という三原則である。この三原則が十分に満たされていないものは,偽科学として退けられ,これらを満たすもののみが,科学的真理として受け入れられる。そして,医学の分野においては,18世紀以来,この三原則を保障する原理の基となってきたのが,病理解剖学であった。欧米の病理解剖室には“hic locus est ubi mors gaudet vitae succrrere”という言葉が掲げられているが,その意は“ここは,死者が生者を教える場である”であり,病理解剖学で得られた最終的な所見なしには,生前のいかなる解釈も無意味であるということを教え諭すものである。本書は,病理解剖室でのこの教えを,大脳皮質の変性性疾患において実践したという意味で,きわめて貴重なドキュメントであるだけでなく,そのような方法論をいかにして個々の症例に適応していくかを考えるうえでも,大きな意義を持つ書物である。
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