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はじめに
医療の質を評価しようとする試みは,歴史をさかのぼると,Codman E(1914)が外科手術の結果に着目して,End Result Systemの概念を提唱したことに始まる5)。Donabedian A(1966)は構造(structure),過程(process),結果(outcome)の3つの視点から評価されるべきであると提唱し6),この考え方は,現在も広く用いられている。医療の質への関心がより高まったのは,1970年代以降,先進諸国において,医療へのアクセスが改善した結果として起こった,医療費の高騰に対するコスト適正化政策,つまり医療経済の圧迫を背景としている14)。さらに医療のEBM(evidence-based medicine)志向,利用者の医療サービスへのニーズの高まりとリンクし,さまざまな質評価の方法が確立されてきた。現在は,政府,支払者,第三者評価組織,利用者による評価が,主に行われている。
ルーチンデータを用いて直接的な医療提供者(治療者)自身が,医療の質を評価するツールとして,ドイツ精神医学精神療法神経治療学会Deutsche Gesellschaft für Psychiatrie, Psychotherapie und Nervenheilkunde(DGPPN)が作成し,ドイツの精神科病院で広く用いられている,入院患者を対象とした患者基本記録Basisdokumentation(略BADO)4)がある。これは,患者構造,治療プロセス,アウトカムを反映する約70項目から構成され,臨床領域全般を網羅する,患者指向型の評価システムである。BADOを用いたドイツにおける質の向上の試みを,現地で調査した結果とともに紹介する。
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