書評
―アーサー・フリーマン 責任編集,ステファニー・H・フェルゴワーズ,アーサー・M・ネズ,クリスティン・M・ネズ,他 編,内山喜久雄,大野裕,久保木富房,他 監訳―認知行動療法事典
原田 誠一
1
1原田メンタルクリニック・東京認知行動療法研究所
pp.613
発行日 2011年6月15日
Published Date 2011/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101900
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このところ認知行動療法CBTに華やかなスポットライトがあたって,関連の書籍も続々と刊行されている。あるいは,CBT盛業の様子に食傷・困惑気味の諸兄姉もいらっしゃるのではなかろうか。そうしたさなか,500頁近いCBT事典の堂々の登場である。満腹気味のところにボリューム満点の濃厚フルコースが出てくるような按配,なきにしもあらずといった風情か。このような状況で,「またCBTの新刊本?」などの感想(否定的自動思考)が浮かぶのも無理からぬところかもしれない。でも,ちょっと待ってくださいね。評者の判断では,本書は精神医療に携わるすべての方が座右に置くに値する卓越した必読・百科事典(エンサイクロペディア)であり,自動思考に導かれるまま敬遠する(結論への飛躍)のはいかにも惜しい。以下,その所以を書き連ねてみましょう。
選りすぐりの116項目に,CBTのエッセンスが見事に詰め込まれている様は圧巻である。項目を追っていくと自然にCBTの歴史を一望して(例:「行動療法」→「うつ病の認知療法」→「アクセプタンス&コミットメント・セラピー」;カッコ内は本書項目名),CBTの標的が理解できるようになっています(例:「うつ病の認知的脆弱性」)。またCBTのセッションに関して,①必須要素(例:「ソクラテス的対話」「ケースフォーミュレーション」),②治療技法(例:「エクスポージャー」「問題解決療法」),③特定の介入法(例:「再発予防」),④治療上の困難への対応(例:「治療抵抗」)などを通して,微に入り細にわたって学ぶことができる。
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