Japanese
English
特集 高次脳機能障害をめぐって
高次脳機能障害における記憶の障害
Memory Problems as a Breakdown of Higher Brain Function
小森 憲治郎
1
Kenjiro KOMORI
1
1愛媛大学大学院医学系研究科脳とこころの医学
1Department of Neuropsychiatry, Neuroscience Ehime University Graduate School of Medicine, Toon, Japan
キーワード:
Traumatic brain injury
,
Working memory
,
Episodic memory
,
Prospective memory
,
Semantic memory
Keyword:
Traumatic brain injury
,
Working memory
,
Episodic memory
,
Prospective memory
,
Semantic memory
pp.979-988
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101714
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
記憶障害は,脳血管障害や脳外傷に起因する高次脳機能障害の代表的な症状である。外傷性脳損傷における記憶障害の出現率は58%以上と広く認められるが9),その症状は多様で,簡易な認知機能のスクリーニング検査などでは十分に評価できない場合も多い。また脳外傷例では,その損傷過程の特性から,病巣部位を画像検査などで同定できない場合もあり,緻密な行動観察から,障害された記憶過程や想定される神経基盤を慎重に推定していくプロセスが必要となる。こうした症例の中には,今日の認知心理学における記憶研究の発展に多大な寄与を果たしたものが少なくない。また実際の記憶障害例では,注意や遂行機能など前頭葉との関連が深い認知活動にも影響が及んでいることがしばしば認められる。本稿では,脳外傷例や脳血管障害例にみられる高次脳機能障害としての記憶障害を理解するうえで助けとなるような,比較的新しい記憶の認知心理学的概念についても紹介する。基本的な記憶に関する用語や評価方法の詳細に関しては,他書に譲ることとする。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.