書評
―八木剛平 著―手記から学ぶ統合失調症―精神医学の原点に還る
小林 聡幸
1
1自治医科大学精神医学教室
pp.418
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101617
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精神医学に現象学を導入したJaspersは,患者の語りをただ聞くのではなく,そのとき患者の内面に何が起こっているのか治療者の心にありありと描き出すという方法を推奨したわけだが,現代の我々はそこで描き出されたものを抽象的な症状名に分節化し,クライテリアの中にきれいに陳列することに堕しているのではないか。
「精神医学の原点に還る」という,謙虚であり,かつ気概のこもった副題の付けられた本書で「原点に還る」というのは,つまりは患者の語りに耳を傾けるということ,より具体的にここでは患者の手記から学ぼうということである。八木氏は少し前にうつ病の論文でうつ病患者の手記を引用していたが,ここではそれを統合失調症で,本1冊を費やして行っているのである。
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