書評
―久保千春 編―心身医学標準テキスト(第3版)
樋口 輝彦
1
1国立精神・神経センター
pp.419
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101618
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歴史と伝統に裏打ちされ,かつ最新の知識を網羅した教科書
「心身医学標準テキスト」が7年ぶりに改訂された。本書の初版は1996年に出版されたが,そのオリジンは1968年に遡る。わが国初の心療内科が1963年に九州大学医学部に設立されたことは誰もが知るところであるが,同時に心身医学の教育も開始された。その講義に使用するための「心身医学・心療内科オリエンテーション・レクチュア」が1968年に発行されたのであり,本書の原型をここに見ることができる。この講義用の冊子が基になり,1996年に全面改訂されたのが「心身医学標準テキスト初版」であった。
本書の特徴はその執筆陣にある。初版以来,執筆者は九州大学心療内科のスタッフと教室出身者で構成されている。このような一教室に限定した執筆陣で構成された教科書は大変めずらしい。多くは販売のことも考慮して,多くの大学や医療機関を巻き込むかたちで執筆者が構成される。しかし,本書の場合は,先に述べたようにわが国の心療内科の老舗とも言える九州大学心療内科が日本の心身医学の教育をリードしてきた歴史と,今日においても全国でその出身者が指導的立場で活躍されていることを考えると,本書は一大学,一教室でつくられた教科書ではなく,まさに日本を代表する心身医学の教科書である。本年,九州大学心身医学教室は創設50周年を迎えたが,その記念の年にこの改訂版が出版されたことはすばらしいことである。
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