私たちの本棚
私の塊のふる里—重吉の世界—花と空と祈り(八木重吉詩稿)—八木 重吉 著
朝倉 和美
1
1明石市立市民病院臨床検査科
pp.41
発行日 1987年1月1日
Published Date 1987/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203965
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原稿依頼を受けて,これまでに読んだ本を思い浮かべてみた.その中で表題に掲げた本は,その昔(?),若かりしころ,いっとき夢中になって読んだ中の一冊である.今年で社会に出て20年の節目を迎えた.八木重吉の本をいろいろ探し歩いたのは17,8年も前,まだ社会の荒波にあまりもまれていない,自分で言うのもおかしいが,純粋で,ひたむきに何事にも真正面から向かっていたころだった.そのころの感性と,今の雑多な苔のついた感性とで,読む印象はどう変わっているか,久し振りにこわいような気持ちで懐かしい本の頁を繰ってみた.そして「変わっていない」と,何やらほっとする思いだった.
あのころ,重吉の詩う心に同感し,心にしみとおるような思いで読んだ詩は,同じように共鳴して心に響く.やはり,永遠につながるものは,相手がどう変わろうと,つねに真実であり続けるのだろうと,あらためて思わせられる.
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