巻頭言
精神医療福祉の動向
長尾 卓夫
1
1医療法人恵風会高岡病院
pp.4-5
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101548
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2004年9月に精神保健医療福祉の改革ビジョンが出されてちょうど5年が経過した。2009年が10年計画の中間年になることから,2008年4月から厚生労働省において「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」(以下検討会)が開かれ,2009年9月に報告書が取りまとめられた。ここでは,それに触れながら精神科病院のことを中心に記してみたい。
わが国の精神病床数は人口万対27.6(2005年)で,先進諸外国が精神病床を削減してきたのに反して病床数が多いままであることが批判の的とされている。しかし,一般に比較のため用いられるOECD(経済協力開発機構)のデータでは,そこに引用されている各国の病床の定義が違っていることに注意しなければならないし,最近のOECDデータでは各国の比較に使わないように注意書きされている。たとえば,アメリカにおける長期療養のための閉鎖施設であるスキルドナーシング施設は万対6~7程度あることや,万対2程度ある司法病床は含まれていないことである。しかし,わが国における地域居住を支援する資源があまりにも少ないのは事実である。いろいろな要因から家族が受け入れに疲弊している精神障害者を社会的にいかに処遇するかのコンセンサスと施策が不十分であったことは否めない。そのため,精神病床が急性期,回復期病床の機能だけでなく,慢性期,認知症,司法的,さらには地域居住施設的などの多機能を持たざるを得なかったことがある。その結果として,統合失調症を中心とした長期在院者を生んできたといえる。
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