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最近の精神医療福祉に関する動きを振り返ってみると,平成14年12月に社会保障審議会障害者部会精神障害分会の出した報告書において「条件が整えば退院可能な7万2千人」の精神科入院患者がいるとされた.この報告書が出た時は,心身喪失者等医療観察法の議論がされていたこともあり,触法精神障害者に対する医療観察法の問題と精神医療福祉の底上げという両輪が必要とされ,同じ平成14年12月に厚生労働大臣を本部長とする精神保健福祉対策本部が立ち上げられた.
平成15年5月に精神保健福祉対策本部の中間報告が出され,これに基づいて,精神病床等・地域支援・普及啓発の3検討会が開かれた.この3検討会の報告を踏まえて,平成16年9月に精神保健医療福祉の改革ビジョンが出された.その内容としては,1)国民意識の変革,2)精神医療体系の再編として,①基準病床数の算定式の見直し,②精神病床の機能分化と地域医療体制の整備,③適切な処遇の確保と透明性の向上,3)地域生活支援体系の再編,4)精神保健医療福祉施策の基盤強化が挙げられ,「入院医療中心から地域生活中心へ」の施策を展開するとされた.これに続いて平成16年10月に障害保健福祉施策のグランドデザインが示され,翌17年10月に障害者自立支援法として制定された.精神保健医療福祉の改革ビジョンで示された中で,実行されたものは①基準病床数の算定式の見直しと,③に関して精神保健福祉法の一部改正が行われた.地域生活支援体系が障害者自立支援法として施行されたものの,精神医療福祉に対する財源措置は全く不十分であり,入院医療の機能充実も地域移行のための居住支援,地域でのサポート体制についてはほとんど整備されていないと言っても過言でない.
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