書評
―西村晋二 著―成人発達障害者の就労をめぐって この子がなぜ障害者なの―『育つ環境』と『働く環境』の間のギャップ
臺 弘
1
1坂本医院
pp.1226
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101544
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近頃の治療報告には,症例検討より集団統計のほうが尊ばれる。ただし,生活障害のからむ細やかな配慮を要する場合には,個人に即した詳しい報告を欠かせない。本書の著者は障害者の就労支援についてのわが国の草分けの人物で,評者とは精神障害回復者の自立支援を通じて30年来の仲間である。彼は73歳となったが,なお篤志者として現場の側に立つ。
昨年,彼から分厚い原稿が届いた。軽く覗いたのでは主旨がわからない。彼の説明によると,これは当時世話をしていた娘さんAの物語で,私がまず障害の解説がほしいと頼んだら,現場の実況がそれを示すという。他の出版社からも原稿に加筆するよう求められたが応じなかったそうである。その頑固さはいかにも彼らしいが,本は広く読まれてこそ価値がある。幸い,若干の加筆の後に出版の運びがかなって,私にも推薦の言葉が求められた。書評を書くことができたのは嬉しい次第である。
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