巻頭言
統合失調症概念の変遷―脳の成熟障害としての神経精神疾患
倉知 正佳
1
1富山大学
pp.726-727
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101463
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本誌の「巻頭言」で,統合失調症について述べたものの中で,年配の読者にとって,おそらくもっとも印象に残っているのは,西丸四方先生の「我,亡霊を見たり」(精神医学 12:2-3,1970)と思われる。そこには,統合失調症がいかに難治性であるかということが生き生きとした筆致で描かれ,「いったい精神分裂病を奥の奥で統べているものは何か」ということが問われていた。1966年に医学部を卒業し,精神医学を志して間もない筆者は,それを読んで大学の精神医学教室が統合失調症の解明に本格的に取り組むべきであることを強く感じたのであった。その後20世紀末から21世紀にかけて,統合失調症研究は次第に活発になり,ちょうど20世紀のはじめから1920年代にかけて理論物理学の大きな変革があったように,21世紀のおそらく最初の4半世紀は,難治性神経精神疾患の解明が飛躍的に進歩するエキサイティングな時代になると思われる。そこで,ここでは,代表的な精神疾患である統合失調症概念の変遷について,述べることにしたい。
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