神経発達症概念の変遷

The History of Concept of Neurodevelopmental Disorders

抄録

　神経発達症の概念は時代とともに，時には劇的に，変化してきた。自閉スペクトラム症の概念はKannerの臨床報告に端を発し，対人関係の障害をその中核としながら，子どもに精神病があるのか，自閉症は子どもの統合失調症なのか否か，精神病か脳機能障害をもつ発達の障害であるのか，障害と健常の境界はどこにあるのか，など精神科医に多くの問題を提起してきた。近年は神経学的多様性（neurodiversity）概念として捉える方向への動きが活発になっている。一方，注意欠如多動症は，子どもにみられる異常な水準の多動性への注目に始まり，注意機能への注目を経て，多動性-衝動性-不注意という行動特性を包括する症候群と考えられるようになった。近年は情動調節の問題に関心が集まっている。神経発達症の概念は今後も変化していくのであろう。