動き
「第48回日本病跡学会総会」印象記
南 健一
1
1横浜市立大学医学部精神医学教室
pp.916-917
発行日 2001年8月15日
Published Date 2001/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902483
- 有料閲覧
- 文献概要
第48回日本病跡学会総会は,香川県高松市で香川医科大学精神神経科教授洲脇寛会長の主催のもと,2001年4月20日,21日の両日にわたり,高松港に隣接する香川県県民ホールで開催された。学会の2日間はあいにくの小糠雨が続いたが,県民ホール5階の学会会場からは霧翳む瀬戸内海の幽美な眺望が愉しめた。参加人数は一般参加者を含め,123名を数えたとのことであった。
一般演題は22題で例年より少ないものであったが,どれも内容は充実したものであり,とくに,大家の活躍が目立ったように思われた。慈雲堂内科病院武正建一氏の「佐伯祐三」に関する論考は,パリ滞在中に生じた精神錯乱を,わざわざフランス政府と交渉されて入手したカルテを元に,今日的視点から再検討されたもので,「佐伯祐三」の基礎論として非常に重要なものと思われるし,また,東京都精神医学総合研究所松下正明氏の「エミール・クレペリンと内村祐之」の発表は,それぞれが残した自伝を一次的な研究資料としたものであるが,氏の詳細な検討により,欧米および日本を代表する精神医学者である両者の気質,問題意識といったものが見事に対比・描出されていた。とりわけ,内村祐之が抱いた当時の精神医学への危機意識について論じた条りは,氏自らの現在の精神医学への問題意識を仮託されているようにも思え,感銘深いものであった。その他,愛仁会高槻病院杉林稔氏の「宮沢賢治」,横浜舞岡病院三木和平氏の「テネシー・ウィリアムズ」,松蔭病院渡邊俊之氏の「フレデリック・ショパン」についての発表などが,それぞれに尖鋭な病跡学的問題が設定され,優れたものであったように思われた。
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.