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はじめに
これまで,アスペルガー症候群の鑑別を論ずる際,統合失調症との比較に関心が寄せられることが多かったが,これはカテゴリーミステイクというべきである。なぜなら,アスペルガー症候群(障害)の中心病態は,筆者8)が指摘したようにDSMでいえば人格レベルの障害にかかわるⅡ軸にこそ位置づけるべきであるからである。そうすると,シゾイドパーソナリティ,ないしKretschmerの意味での統合失調病質と(分裂病質)の比較検討が要請されてくる。いずれにせよ,この方面の問題についての議論は十分なされていない。その大きな理由は,アスペルガー症候群がもともと小児自閉症に近縁な病態として,児童精神科医,ないし小児科医によって研究され,概念の提唱がなされたのに対し,シゾイドパーソナリティ障害が統合失調症に近縁な病態として成人の精神障害を専門とする精神科医によって研究され,提唱されたというように,それぞれの概念の出自に大きな違いがあることに求められる。加えて,現代においてアスペルガー障害にあたる病態が増加し,その言葉の軽い響きも手伝って,瞬く間に人口に膾炙したことも影響していると思われる。さらに,統合失調症の病像が時代的変遷しているように,統合失調症近縁の独特な質を持ったパーソナリティも,現代情報社会に入り変化を来していることも考えられる。
小論では,まずアスペルガー症候群(障害)の概念の歴史を跡づけながら,小児精神科医がアスペルガー症候群(障害)と診断した事例を実際に挙げ,診断的検討を行ってみたい。次いで,Kretschmerが統合失調病質をいかに構想していたのか再吟味を行いたい。最後に,現象学-人間学的な観点からアスペルガー障害とシゾイドパーソナリティ障害がいかなる関係にあるのか述べたい。
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