書評
精神分析的精神療法セミナー―発見・検討・洞察の徹底演習〔技法編〕
土居 健郎
1
1聖路加国際病院
pp.623
発行日 2008年6月15日
Published Date 2008/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101231
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この本は長年メニンガ・クリニックで診療に従事した著者が1996年日本に帰国した後,大阪を中心に開始した日曜セミナーの記録を集大成し編集したものである。全体は15章に分かれ,それぞれ症例報告とスーパービジョンの要点,次いでそれと関連する精神分析的基本概念の考察と問題提起ならびに参考文献,最後に参加者チームとの対話でしめくくられている。参考までに各章の題目を列挙すると次のごとくである。「セラピーにおける規則性と自発性」「バウンダリ(境界)の臨床的問題」「チーム治療におけるセラピストの主体性」「カウチ使用の精神療法」「解離と分裂と抑圧についての探索と支持の意味」「思春期の危機と家族の力動」「抵抗とは何か」「外傷・空想・妄想と症状」「転移性倒錯」「恋愛転移か自己愛転移か」「分裂部分対象関係」「対象喪失と喪・抑うつ症のワークスルー」「転移性恋愛への抵抗」「解釈の種類と特に蘇生解釈について」「自我の葛藤か欠損か」,以上である。ところで以上の題目を読んだだけでそこに書かれている内容を想像できる読者は皆無ではなかろうか。この点本書はこれまで精神分析的精神療法について書かれたいずれの書物とも異なっている。外国人著者による著述の翻訳であろうと日本人著者による著述であろうとその点区別はない。それくらい本書は創意工夫に富んでいる。これは長年米国に滞在してそこで訓練を受けたばかりか,さらにその地で一精神分析的精神科医として実践を続けた著者にして初めてできた偉業であるといって過言ではないであろう。
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