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第13回国際老年精神医学会(International Psychogeriatric Association)が,2007年10月14~18日の5日間にわたって武田雅俊会長(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室)のもと,大阪国際会議場で開催された。なお,15,16日は第22回日本老年精神医学会と,17,18日は第26回日本認知症学会との合同開催であった。国際老年精神医学会の日本での開催は,1989年の第4回東京大会(会長:長谷川和夫先生)以来,18年ぶりである。今回は国際老年精神医学会設立25周年の記念すべき年にあたり,銀婚式の意味も込めて「IPA2007 Osaka Silver Congress」と名づけられた。そして心身ともに健康な高齢者が自ら積極的に参加する豊かな高齢社会を築いていこうとの願いを込めて「Active Aging-Wisdom for Body, Mind, and Spirit」というスローガンが掲げられた。当学会には,例年,医師や研究者だけでなく,看護,介護,リハビリテーション,福祉などの専門職,行政,企業など幅広い領域から参加者が集うが,今回は,世界52か国,2地域からおよそ2,900名(国内1,800名,海外から1,100名)とこれまでで最も多い参加者数を記録し,非常に盛況な会となった。
大会初日は開会式に引き続いて長谷川和夫,Carl Eisdorfer,Ho Young Lee,Raymond Levyの4氏による基調講演が行われた。未来への視点を踏まえた老年精神医学の重要性についての格調高い講演だった。翌日から,特別講演8セッション(23題),シンポジウム34セッション(141題),一般演題(口頭発表115題,ポスター発表565題),モーニングセミナー9セッション(16題),ランチョンセミナー8セッション(22題),イブニングセミナー6セッション(13題)と,従来の本学会の規模を超える演題数の発表が行われた。特別講演は,「睡眠,概日リズム,体内時計」,「神経変性のメカニズム」「民族文化コミュニティの精神医学」「ゲノミクス,プロテオミクス,ファーマコゲノミクス」「認知症の新しい治療法」「血管性認知障害」「不安神経症とうつ」「パーソナリティと加齢」と多彩なテーマで構成された。いずれも各領域の第一人者が最近の知見も交えてわかりやすく講演し,大変興味深い内容であった。このほかシンポジウムや一般演題のテーマも,本学会の参加者の職種の多様さ,参加地域の広範さを反映し,高齢者のうつ病や認知症などに対する医療,看護,介護,福祉,家族支援,予防,社会政策,倫理的問題,先端の脳科学などきわめて広範な領域を網羅した。認知症領域では,アルツハイマー病関連演題のほかMCI,BPSDなど最近関心を集めているテーマに対しても多数の発表が行われた。また高齢者の精神症状に対する非薬物療法的アプローチに関するセッションがいくつか組まれていたが,非常に参考になった。
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