動き
「第13回日本老年精神医学会」印象記
三山 吉夫
1
1宮崎医科大学精神科
pp.1131
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904642
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第13回日本老年精神医学会が6月25,26日,山陰の小京都,水の都とも呼ばれる松江市で石野博志会長(島根医科大学精神医学講座教授)のもとに開催された。本学会は我が国でも加速度的に進行する高齢化社会を背景に設立され,年々盛会となっている。今回の参加者数は約400名(会員数約930名)であった。一般演題67のほか会長講演,記念講演があり,一般演題は2会場に分けられ同時進行で行われた。会長講演と記念講演は全員参加の大ホールで行われた。
一般演題は,老年精神医学の分野で最大の課題とされる痴呆性老人対策に関する演題が最も多く,症状,診断,治療,神経病理,心理検査,ケア,脳波関連,画像,行動科学などの多岐にわたる最新の知見発表が行われた。日本痴呆学会では,より分子生物学的および遺伝学的研究発表が中心となるのに対し,本学会はより臨床一社会的研究発表が特色といえる。痴呆の早期臨床診断,重症度の判定,ケアや介護などの社会的対応に関する研究発表が数多くみられた。筆者に興味があった報告をいくつか挙げると,大都市圏では問題となる痴呆性老人の徘徊が沖縄県の石垣島では問題とはならないという痴呆性老人の社会・心理的要因(高橋幸男氏),頭頂葉機能低下が痴呆性老人の徘徊の指標となる(堀宏治氏),老年期痴呆の5年後の生命予後の比較(植木昭紀氏),アルツハイマー型老年痴呆患者の睡眠・行動障害に外因性メラトニン補充療法(大川匡子氏),痴呆性老人グループホームの状況(北村ゆり氏),痴呆性老人の法的処遇の問題点(斎藤正彦氏),過疎高齢化地域のケアシステム(栗田主一氏),非アルツハイマー型痴呆の臨床—病理(池田研二氏)などであった。
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