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2007年9月27,28日,金沢で,小山善子教授(金城大学)を会長として,第31回日本神経心理学会が開催された。1978年に日本神経学会の関連セッションが契機となって発足した神経心理学懇話会は,同年,金沢と同じ石川県の山中町において,金沢医科大学の鳥居方策教授のもとで,実質的な最初の研究会として開催された。筆者はそのときから懇話会に参加していたので,発足以来今日まで,ずっとこの学会と歩みをともにしてきたことになる。当初はせいぜい100人くらいの集いであったが,今や,会員の数は1,700人前後に達している。発足から間もないうちに,懇話会は日本神経心理学会となったが,この間,強い指導力を発揮して,今日の学会の基礎を固められたのは,今はなき東京大学の豊倉康夫教授と京都大学の大橋博司教授,そして金沢医科大学の鳥居方策教授(現名誉会員)であった。山中町での最初の懇話会のメインテーマは,離断症状群(Disconnection Syndromes)で,筆者もシンポジストの片隅に加えていただいていた。それから6年後に山口成良会長のもと金沢で第6回の学会が行われて以降,実に25年ぶりに,金沢で日本神経心理学会が開催されたことになる。発足当初の状況や経緯を知る会員は次第に少なくなってきているが,筆者ら当初からのメンバーにとって,金沢はいわば発祥の地でもあり,大変に懐かしいところである。
発足から30年近くが経って,神経心理学もとりわけここ数年,大きく変わりつつある。今回の金沢学会は,まさに最近の神経心理学におけるパラダイムシフトを端的に象徴する学術集会となった。当初,神経心理学は,「失語・失行・失認」を中心とする,いわば多少とも「道具機能」といえる障害を主たる研究対象としていたのであるが,記憶障害・注意障害・遂行機能障害・情動障害などへと次第に研究領域が広がってきて,とりわけ今世紀に入ってからは,他者理解障害や社会行動障害といった,もはや「道具機能」障害とはいえない領域までが,神経心理学の研究対象となってきている。筆者が京都で会長をした第29回(2005年)のメインテーマは,「他者理解の神経心理学」であった。
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