書評
―Paul French,Anthony P Morrison 著,松本和紀,宮腰哲生 訳―統合失調症の早期発見と認知療法―発症リスクの高い状態への治療的アプローチ
倉知 正佳
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1富山大学医学薬学研究部精神科早期治療開発講座
pp.877
発行日 2007年8月15日
Published Date 2007/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101049
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統合失調症の早期診断・早期治療には,初回エピソードからさらに進んで,「心のリスク状態」に対する介入がある。本書は,「精神病発症リスクの高い状態にある人々の早期発見と認知療法」(原題)について具体的事例を交えながら,解説したものである。原著者らはこの分野に経験の深い臨床心理学の専門家で,訳者の松本和紀氏と宮腰哲生氏は,東北大学精神科で,実際にこのような早期介入を実施しておられることから,最適な訳者による翻訳と思われる。
本書の「まえがき」では,「統合失調症」より一般的な「精神病」という用語を使うこと,疾患診断より症状に対するアプローチを重視することなどが述べられている。第Ⅰ部第1章「早期発見の重要性」では,未治療精神病期間が長くなると予後が不良となり,この期間は心理社会的発達という点からも本人にとって重要な時期であること,前駆期は後方視的概念なので,「ハイリスク」,あるいは「アットリスク」という表現を用いること,第2章「どのようにしてリスク群を発見するか」では,オーストラリア,ボン,米国の方式が紹介され,第3章では,介入戦略として,心理学的方法が最適であろうと述べられている。
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