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はじめに
電気けいれん療法(electroconvulsive therapy;ECT)は,うつ病をはじめ,さまざまな疾患で有効性が報告されている1)。さらにパルス波治療器が認可され,従来型サイン波治療器と比較して,少ないエネルギーで有効な発作が得られ,認知機能障害などの副作用も少ないと言われている16)。また全身麻酔下で筋弛緩薬を用いた修正型電気けいれん療法(modified ECT;m-ECT)が推奨され,ECTの安全性は向上した10)。しかしその一方でサイン波治療器と比較して,パルス波では出力が低いことが指摘され5),また全身麻酔薬は一般に抗けいれん作用を有するため,出力の弱いパルス波治療器では麻酔薬による影響を受けやすいと考えられる。
ECTに用いられる麻酔薬は,欧米ではけいれん閾値を変化させないmethohexitalが用いられているが,本邦では未発売であり,以前より超短時間作用性バルビツレートであるthiopentalや静脈麻酔薬propofolが用いられてきた14)。propofolは代謝,覚醒が速やかで,刺激に対する血圧上昇を抑え,制吐作用も有する静脈麻酔薬である2,3,10,17)。しかし濃度依存性にけいれん閾値を上昇させるため,投与量によりけいれん発作が抑制される可能性がある。
近年,propofol麻酔において,コンピュータシュミレーションにより血中濃度や効果部位濃度を予測し,持続投与を行うtarget controlled infusion(TCI)が臨床で用いられている12)。具体的には年齢,体重,目標濃度をシリンジポンプに入力するだけで使用できる。このTCIを用いたpropofol麻酔によるECTに関しては竹内らがサイン波ECTで発作持続時間の予測を報告しており,目標濃度を1.0~1.7μg/mlの範囲で行うことを推奨している15)。我々もこれを参考にパルス波ECTに応用したが,パルス波ECTでのTCIを用いた報告はない。
当院では2005年よりパルス波ECTを開始したが,このTCIを用いた麻酔深度予測を麻酔科の協力のもと行った。ECTにおいて当初,目標血中濃度として1.5μg/mlの状態で刺激を行っていたが,若干血圧上昇がみられる症例も認めたため,2006年4月からは2μg/mlに濃度を上げて行った。そこで今回,TCIを用いたpropofolの目標血中濃度において1.5μg/mlと2μg/mlという麻酔深度の違いで,パルス波ECTを行った場合の脳波による発作波時間に違いがみられるかを後方視的に検討した。
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