巻頭言
精神医療の質と治療文化
池淵 恵美
1
1帝京大学医学部精神科学教室
pp.588-589
発行日 2005年6月15日
Published Date 2005/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100819
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筆者は病棟医長をしており,デイケア責任者でもあるところから,そこで行われている精神医療・サービスがはたして良質のものであるのかどうかをしばしば自問する。「質」を規定する要因はもちろん様々な次元のものがあり,たとえばわが国の医療制度であるとか,職員の配置数であるとか,個人的には改変することが困難なものも多い。そうしたいわば下部構造の中で,私たちが望み得る良質のものを提供できているか,という問いである。何で計るのかといわれれば,平均在院日数や再入院率などの数値もあるが,利用した患者さんやご家族がどの程度よくなったと感じ,また満足していただけているのか,また私たちが自己の力量を十分発揮して援助し,その結果改善したかといったいわば「実感」が,専門家としての私たちの自負心に連なるように思われる。そして適切な診断のもと,有効な薬物療法が行われることは必須であるけれども(そしてそのことは簡単に達成できることではないが),「質」は心理社会的治療の質にかなりの部分規定されるように感じるのは,筆者がその分野を専門としているからであろうか。
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