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本年6月18日10)に日本産科婦人科学会「着床前診断に関する審査小委員会」がデュシェンヌ型筋ジストロフィー症(DMD)に対する着床前診断の実施を答申し,学会倫理委員会での審議と2度の公開倫理委員会を経て,7月23日2)の同学会臨時理事会で「申請症例に対する着床前診断の実施を認可する」との結論が付帯事項付で議決されました。これにより,学会の承認を受けたわが国で最初の着床前診断が行われることになります。このことは,精神科医にとっても注目すべきことと考えます。
そのように申しますのは,遺伝性神経筋疾患のうち,精神症状を主訴に受療する可能性のある疾患はハンチントン病,歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症,筋緊直性ジストロフィー症など決して稀有ではないからです。いずれも医学の急速な展開がもたらす発症前の遺伝子検査によって,健常者の将来発症はもちろん,その時期や経過まで概略が診断可能です。このため(とくに発症前の)遺伝子診断は,本人のみならず血縁者にも大きな影響を及ぼし,さらに対人関係,就学,就職,結婚,保険加入などへの差別を生じうるため,安易な実施を厳に慎む必要があります。日本人類遺伝学会では2000年1月に,それまでに存在した複数のガイドラインを改定して「遺伝学的検査に関するガイドライン」6)を発表,その中で「特定の変異遺伝子を保有するがゆえに不当な差別を受けることがないように,また必要に応じて適切な医療及び支援を受けることができるように努めるべきである」としています。その後,このガイドラインは日本産科婦人科学会,日本人類遺伝学会を含む遺伝医学関連8学会(2001年3月),同10学会(2003年8月)による改定を経て現在に至っており,さらに学会の自主規制では限界があるとして着床前診断の臨床実施の是非や,生命倫理全体の在り方についての政府・国レベルでの検討を求める要望書が政府に提出されています2,5)。
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