Laboratory Practice 臨床編 臨床検査はどう利用されているか
遺伝子検査の課題—ゲノム時代を迎えて
大久保 昭行
1
1大蔵省印刷局東京病院
pp.1350-1351
発行日 2000年10月1日
Published Date 2000/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905635
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病気と遺伝子との関係
ヒトゲノムの解読を進めてきた日米欧などの国際共同チームは,ヒトゲノムの概要版が完成したことを2000年6月26日に発表した.ゲノムの全解析は3年以内に完全に完了すると予想されている.しかし,遺伝子の機能の研究はまだ始まったばかりである.遺伝子間の錯綜した関係,制御機構の複雑さ,研究手段の倫理的な制約などを考えると,遺伝子の機能の解明は極めて困難である.
遺伝子解析技術の進歩に伴って,病気と遺伝子との関係の研究も急激な展開を見せている.遺伝因子が病気にどの程度関与するかを調べるために,遺伝子が同じで養育環境もほぼ同じの一卵性双生児の病気の一致率と,遺伝子の半分は違うが養育環境は同じの二卵性双生児の病気の一致率,さらには養子によって養育環境が異なる一卵性双生児の病気の一致率を比較する研究が進められている.その結果,臨床的に遺伝傾向が認められていた病気,例えばII型糖尿病(中年以降に発症する糖尿病)で遺伝子の役割が大きいことが確認されただけでなく,多くの病気の発症に遺伝因子が関与していること,結核でさえ遺伝因子の関与が認められることが明らかにされた.
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