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第34回日本神経精神薬理学会(NP)年会が加藤進昌会長(東京大学大学院医学系研究科精神医学教授)のもと,2004年7月21日から24日の3日間にわたり,東京「都市センター」にて開催された。今年は,より基礎と臨床の融合をはかる初の試みとして,第26回日本生物学的精神医学会(BP)年会(高橋清久会長,国立精神・神経センター名誉総長)との合同開催であった。そのため,内容も盛りだくさんで,興味深い講演も多く,連日30度を超える猛暑にもかかわらず,多数の参加者を集め大変盛況であった。シンポジウムやワークショップ,プレナリーレクチャーはそれぞれテーマにより,NP,BP個別か,あるいは合同で企画され,各会長をはじめ,プログラム委員の先生方によりきめ細かい構成がなされたことがうかがわれた。
合同開催されたことにより,参加者はNP,BPの区別なくいずれのセッションにも参加できる点は非常によかった。シンポジウムは,「分子からこころを探る」,「薬理遺伝学の新展開―テーラーメード医療を目指して」,「統合失調症の脳機能と形態」,「環境化学物質と脳・行動」と多岐にわたるテーマで開催された。合同ワークショップは,「覚醒剤の過敏性変化は修復できるか」をテーマとし,ディスカッションが行われた。それぞれの企画では,分子生物学,薬理学,脳画像,あるいは臨床的な観点から各分野の専門家が積極的にディスカッションされていた。個人的には,合同シンポジウム「薬理遺伝学の新展開―テーラーメード医療を目指して」において,神経画像の分野での研究成果がわが国でめざましくあげられている点,糖尿病の専門家からその観点より精神医学研究への提言がなされ,共同研究についての可能性について意見が交換されていた点が新鮮で,特に興味深く拝聴した。基礎的な内容の演題は,一精神科医としては敬遠しがちになってしまうが,実際には非常にわかりやすく発表されていて,基礎研究には縁遠い者でも,興味深く聞くことができたのではないかと思われる。この点では,基礎と臨床の融合をはかるという本学会の目的は果たされていたのではないだろうか。
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