Japanese
English
試論
20世紀前半の「脳病理学」における「全体論」の歴史的背景と現代の神経心理学,(精神)医学,人文学,諸科学との関連―Kurt Goldsteinの考想を中心に
The Holism (“Ganzheitslehre”) in Cerebral Pathology (“Gehirnpathologie”) during the First Half of the 20th Century (esp. the Thinkings of Kurt Goldstein): Its Historical Background and Implications for the Contemporary Neuropsychology, Psychiatry, Medicine, Humanities and other Disciplines
濱中 淑彦
1
Toshihiko HAMANAKA
1
1八事病院
1Yagota Hospital
キーワード:
Holism (Ganzheitslehre)
,
Kurt Goldstein
,
Neuropsychology
,
Medical biology
,
Philosophy & humnities
Keyword:
Holism (Ganzheitslehre)
,
Kurt Goldstein
,
Neuropsychology
,
Medical biology
,
Philosophy & humnities
pp.1225-1233
発行日 2004年11月15日
Published Date 2004/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100588
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はじめに
「脳病理学Hirnpathologie」における「全体論」と「局在論」,やや次元がずれるのだが「知性論者」と「反知性論者」の論争(井村 1954,大橋 1960)34)が,20世紀前半に,主として失語学説について白熱の議論の対象であったとしても,とりあえずは過去の歴史に属する問題だと言わざるを得ないかもしれない。とはいえ「全体論」的考想は,脳病理学の延長上にある神経心理学neuropsychology(濱中 1985)23)においても若干かたちを変えてのことではあるが,幾つかの主要な学説に登場し,その一部は20世紀前半の論議とつながりがないわけではなく,殊に最近の認知リハビリテーション(例えばPrigatano 1999)には「全体論」再評価の動きがあって,これについては別稿(濱中)25)で論じる機会があった。他方それは,神経心理学以外の医学と諸科学の領域でも,次元は異なるにしてもさまざまに論じられる主要テーマの一つとなっており,あるものは神経心理学や(神経)精神医学とも無縁とは言い切れぬ局面を示している。
本稿では「脳病理学」時代の「全体論」を,なかんずくGoldstein15~18)の「有機体」論(1927~1948)を中心として再検討し,従来詳論される機会のなかった「全体論」の起源と周辺,歴史的背景を概観した上で,現代の医学や諸科学との関連を,筆者の知る範囲で考察したい。
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