Japanese
English
古典紹介
Adhémar Gelb und Kurt Goldstein—色名健忘について—並びに,健忘失語一般の本性と,言語と外界への行動との間の関係についての研究—第3回
Adhémar Gelb und Kurt Goldstein: Über Farbennamenamnesie--nebst Bemerkungen uber das Wesen der amnestischen Aphasie überhaupt und die Beziehung zwischen Sprache und dem Verhalten zur Umwelt (Psychologische Analysen hirnpathologischer Fälle, X)〔Psychol. Forsch., 6: 127-186, 1925〕
波多野 和夫
1
,
浜中 淑彦
2
Kazuo Hadano
1
,
Toshihiko Hamanaka
2
1大阪赤十字病院精神神経科
2京都大学医学部精神神経科
1Dept. of Neuropsychiatry, Osaka Red Cross Hospital
2Dept. of Neuropsychiatry, Faculty of Medicine, Kyoto Univ.
pp.517-528
発行日 1981年5月15日
Published Date 1981/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203261
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
6.患者の色彩体験の変化
我々は先に分類原理の欠如と並行して,色見本の山を見た時の現象的な印象が正常状態から変化を来していることを述べた。分類検査その他類似の状況に於ける患者を直接に観察するだけでも,患者の色彩体験が何らかの病的変化を来しているにちがいないとの動かし難い印象を受ける。だから様々な研究者がこの種の患者には言語障害の他に色彩知覚の一次的障害が存在すると考えたのも理解出来るのである。しかしアノマロスコープなどの色覚検査の結果完全な色覚正常者であることが証明されたので,色覚障害はいわば「より高次の」性質を持つと考えざるを得なくなった。研究者の立場次第でこのことについては種々さまざまな考え方が抱かれることになった。
Berze(原注29)は名辞健忘の他にも色彩視Farbensehenの一次的障害が存在し,それは通常の意味での色覚異常ではないにしても,「色彩質Farbqualitatが他の要素と対等に注意を喚起すること」が出来ない結果を来すような障害であると考えた。Berzeによればこのことによって色調よりも明度を優先する傾向が生ずるとされる。Berzeはなかんずくこの仮説を患者が明度に従って分類することが多いという事実から引き出したのである。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.