書評
Schizo-Oligophrenie 統合失調症様症状を呈する発達遅滞
臺 弘
1
1坂本医院
pp.1150
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100343
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本書は誠実な精神科医であった著者が,真摯な臨床の一生をかけて孤独に取り組んだ課題である「精神病とは何か」についての考察である。評者は不思議な因縁で本書の発端からかかわり,今回は書評を引き受けることになった。亡友の依頼を断るわけには参らない。本書は独特な構想と論議の著作であるので,まずは原点と大綱を吟味する必要があろう。
著者は本書の主題が①Schizophrenieの本質的な症状は対人感情障害にあるとする見解,②Schwachsinnを知能障害より人格障害とする観点,③表現症状群(Ausdruck-Symptomen-komplex)の記述に依存する解析法にあるとしている。分裂病の中軸症状を対人感情障害とする立場は,わが国では立津政順に発する。彼は慢性覚せい剤中毒精神病と分裂病との鑑別に当って「打てば響くような反応を持つ人は分裂病ではない」と喝破した人である。松澤病院で立津に学んだ青医連は本書ではM-Schuleと呼ばれており,著者はその末輩にあたる。評者も「打てカン」反応には賛成していて,分裂病として来診した1女患者との会話に何気なく「貴方,薬使ったことあるの」と聞いたら,「えぇあるわよ」と即答された。彼女が以後20年間も薬の濫用を繰り返し,見る影もない欠陥状態で入院を続けていると聞いたのは悲しい。一方評者らは動物の慢性覚せい剤中毒が統合失調症モデルとなることを提唱していて,本症が人間特有の疾患であるとは認めていない。
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