Japanese
English
特集 循環器疾患の治療における持効性製剤の意義
持効性製剤はどこまで必要なのか—その功罪
Merits and demerits of long acting formulation of cardiovascular drugs
中島 光好
1
,
橋本 久邦
2
Mitsuyoshi Nakashima
1
,
Hisakuni Hashimoto
2
1浜松医科大学薬理学
2富士宮市立病院薬剤部
1Department of Pharmacology, Hamamatsu University School of Medicine
2Division of Pharmacy, Fujinomiya City Hospital
pp.1057-1060
発行日 1990年11月15日
Published Date 1990/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910037
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.持効性製剤の時代的要求
現在の急速な高齢化は大きな社会問題である。医療の面でも循環器疾患患者の増加は著しい。全国循環器疾患基礎調査によると,高血圧症患者比率は,50歳代では全体の約3割,60歳代では4割弱,70歳ではほぼ2人に1人が高血圧症患者である。これら老人患者の特徴は合併症の多いことである。糖尿病,高尿酸血症,腰痛症,神経症などを合併しており,同時に多種の薬剤を長期間にわたって服用しなければならない。このように長期に数多くの薬を服用することは大変困難であり,当然服薬コンプライアンスの低下を招来する。特に物忘れがひどくなると1日1回の薬,2回,3回の薬と服薬方法の異なる薬を投与されたりしようものなら一層コンプライアンスは悪くなり効果が出なかったり,過剰または過誤服薬で副作用を起こしかねない。それとともに薬剤間の相互作用も多くなり副作用の出現頻度は大幅に増加する。また高齢者は肝臓や腎臓機能の自然低下もあり,若年者より副作用がでやすい。
持効性薬剤は,このような患者の服薬に関する負担を少しでも軽くしようということを一つの日的として現在盛んに開発されている。最近市販されるようになった循環器系の持効性薬剤を表1に示す。これらはいずれも通常,一日1〜2回服用されている薬剤である。薬剤それ自体が持効性であるものと,製剤的工夫を加えることによって持効性にしたもの(持効性製剤)に大きく分類することができる。
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.