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気管支喘息は現在common diseaseの一つであり,わが国での推定有症率は4.5%,推定患者数は約560万人とされる(中江公裕,馬場廣太郎:気道アレルギー1999〜2000,p15,2000).一方,気管支喘息の最悪の転帰が喘息死であるが,1999年で人口10万当たり4.3人,成人での死亡実数5,360人と報告されている.すなわち,喘息患者の1,000人に1人が喘息発作によって死亡していることになる.しかし,近年喘息死は明らかに減少した.人口10万当たりの死亡率でみると,1970年で8.8人,1999年で4.3人と30年で約1/2となった.だが,その推移をみると70年代から80年代初めにかけて著減し,その後10年余り5人前後と横這い状態となり,そして1996年以降再び緩やかな減少傾向となっている.この先死亡率がどう変化するかであるが,いずれにせよ人口10万当たり4.3という率は,欧米の10万当たり2人前後と比較すると,依然として高いのである.
喘息死の更なる減少を目的として,日本アレルギー学会,日本小児アレルギー学会では特別委員会を設置たて,その現状や原因の検討を行った.成人での喘息死に至った発作の誘因としては気道感染が最も多く,ついで疲労・過労,ストレスの順であり,その他ステロイド薬の急激な離脱・減量,喘息治療薬の中断,手術,喫煙,吸入β2刺激薬の過剰使用などが目立つ.更に死亡に関連する事項として,重症度の判断の誤り,不定期受診,コンプライアンスの低下,治療不足などが挙げられている.また,小児の喘息死にについては吸入β2刺激薬の不適切な使用,発作の予期せぬ急激な悪化,適切な受診の遅れ,不十分な治療などが指摘されている.
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