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特集 神経活性物質と呼吸
黄体ホルモンと呼吸調節の性差
Female Sex Hormones and Gender Differences of Ventilatory Control
巽 浩一郎
1
Koichiro Tatsumi
1
1千葉大学大学院医学研究院加齢呼吸器病態制御学
1Department of Respirology (B2), Graduate School of Medicine, Chiba University
pp.31-42
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902407
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はじめに
アダムとイブの人間の歴史の始まりから,この世に男性と女性が存在するという事実は避けられない.臨床の場において,この疾患には性差があるようだ(例えば,びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症は女性のみであるとか)という感触はもったとしても,性差と呼吸調節の差異をはっきりと感じることは少ないかもしれない.
しかし臨床の現場をみてみると,女性ホルモンは,更年期障害などの婦人科領域では使用されている.さらに,前立腺肥大症にはアンチアンドロゲン製剤が使用されている.このような性ホルモンレベルに影響を及ぼすような薬剤を投与する場合,目には見えないかもしれないが,呼吸調節機構には何らかの変化が起きていると考えられる.
この世に男性と女性がいるかぎり,臨床病態の裏には性差は何らかのかたちで呼吸調節機構に影響を及ぼしているはずである.もちろん,それが問題になるのは何らかの特殊な状態に限られるとは思われるが.例えば,低換気状態(睡眠,肥満などの負荷がかかった状態,上気道狭窄を起こす状態,など)に対する代償機構の性差,妊娠・性周期・閉経に伴う呼吸の変化には性ホルモンの関与が考えられる.そのような場合,性ホルモンが,どの部位にどのような機序により呼吸調節機構に影響を及ぼしているのかを理解することは重要と思われる.また呼吸調節機構における男女の性差は,すべてが性ホルモンの違いによるものではない,ということの認識も同様に大切と考えられる.
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