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循環器領域における近年の遺伝子治療の発展
当初,先天性疾患の治療として始まった遺伝子治療は,現在,癌をはじめ各種疾患を対象とできるものになった.遺伝子治療は遺伝子欠損症に対する遺伝子補充療法である第一世代から,多因子疾患に対する第二世代に確実に広がっており,循環器疾患もその対象に含まれる.なかでも再狭窄は比較的古くより検討され,当初遺伝子制御による血管平滑筋細胞増殖抑制療法が注目された.細胞周期調節遺伝子に注目し,細胞周期を負に制御する遺伝子,変異型Rb1), p 532), p 213)遺伝子の導入,また細胞周期を正に制御する遺伝子,c—myb4), c-myc5), cdc 2 kinase6), PCNA6)のアンチセンスによる抑制などが検討されてきた.さらに転写レベルで細胞周期調節遺伝子を抑制するE2Fdecoy7)はグラフト後再狭窄予防として実際に臨床応用された8).彼らは手術時にex vivoでE2Fdecoyを血管壁に導入したグラフトが,1年間のfollow-upで再狭窄率を約1/3に減じると報告している.日本でも大阪大学においてPTAあるいはPTCA後の再狭窄予防として臨床応用が実施されている.
さらに最近では内皮細胞に注目したリモデリング改善療法(内皮再生療法)も検討された.内皮細胞は血小板凝集抑制,平滑筋細胞増殖抑制,血管の弛緩性維持など,血管のバリアとして非常に重要であり,より生理的で恒久的な治療になりうるとして期待されている.平滑筋細胞に影響を与えず,内皮細胞のみを特異的に増殖する内皮特異的増殖因子の遺伝子導入による内皮再生療法が注目された.内皮特異的増殖因子としてVEGF(Vas—cular Endothelial Growth Factor)が報告されており9),その臨床応用は既に欧米では始まっている.FinlandのKuopio大学のHarikainenらはVEGFを用いた遺伝子治療をKupio Angioplas—ty Gene Transfer(KAT)試験として報告している.彼らは1枝または2枝病変患者10例に対して,PTCA直後,冠動脈内にVEGF遺伝子をliposomeを用いてDispatch catheterで導入したが,残念ながらnegative dataであった.これは血管への遺伝子導入効率(1iposome法で導入している)が問題であることが予想され,現在アデノウイルスベクターを用いた検討が行われている.一方,HGF(Hepatocyte Growth Factor)の内皮選択的増殖作用も注目されており,基礎的検討では効果が示されている10).他の内皮細胞増殖因子VEGF, b-FGFなどに比し強い増殖作用を呈し,また内皮細胞特異的な増殖因子であり,b-FGFとは異なり平滑筋細胞は増殖させないので,VEGF同様その臨床応用が期待される.他の内皮細胞増殖因子VEGF, b-FGFなどに比し強い増殖作用を呈し,したがってHGFはVEGF同様,血管新生作用があることが予想された.HGFはまた内皮細胞特異的な増殖因子であり,b-FGFとは異なり平滑筋細胞は増殖させないので,VEGF同様その臨床応用が期待される.
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