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はじめに
急性心筋梗塞治療における急性期冠動脈再灌流療法,CCUにおける不整脈やポンプ失調の管理,ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬,β遮断剤,抗血小板薬などの臨床応用は,劇的にその急性期・慢性期予後を改善してきた.こういった目覚ましい進歩は,医療のいわば“量的”勝利といえるものである.この量的達成の結果,あらたな価値として,患者の高い質での日常生活,社会生活の維持という概念,すなわちQuality ofLife(QOL)が生まれてきた.
心筋梗塞急性期治療はダイナミックで,短時間である.しかし,患者にとってこれは心筋梗塞—虚血性心疾患との長い共存のただの開始点に過ぎないのである.その後に引き続く,社会復帰,健康維持,再発予防の努力は永続的に続くものであり,この長い道のりが,果たしてその個人の人生の充足感,安定感,不安やうつ状態のない幸福感に満たされたもの,すなわち高いQOLを持ったものであるかどうかが問われてくる.医療を提供する側が,この部分に興味を持ち,その向上のために継続的かつ組織的に支援し続けることが求められるようになってきた.
QOLとは個人の価値観と環境(これは自分の身体的環境および社会的環境を包括したもの)との相対関係によって規定されるものであり,流動的なものである.これを改善することは,患者自身が,疾患という新たな因子を構成要素として含んだ価値観を再認識することに始まる.医療がこれに介入することができるのは,疾患との共存という過程に対し,正しい情報を適切な量与えること,その過程を阻害する因子を排除することにあると考える.阻害する因子としては,身体的苦痛(狭心症状や低心機能に起因する諸症状など),将来発生する可能性のある心事故,煩雑な服薬や過剰な行動規制,不明瞭な情報などがあげられる.
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