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はじめに
わが国でも「睡眠学の創設」が提唱され始めている.睡眠学は,睡眠社会学,睡眠医学,睡眠科学の三つからなる.睡眠障害の臨床は主に睡眠医学に属するが,睡眠障害の診療において睡眠呼吸障害が占める割合はさらに拡大しつつある.睡眠医学(sleep medicine)の立場からは,睡眠呼吸障害の診断を始める前に,最低限で以下の三つを学ぶ必要がある.一つ目はRechtschaffen&Kales(RK)による睡眠段階分類の国際基準1),二つ目は睡眠障害の国際的診断分類(The InternatioialClassification of Sleep Disorders Diagnostic andCoding Manual;ICSD)2),そして三つ目は1999年に発表されたAmerican Academy of SleepMedicine(AASM)委員会からの睡眠呼吸障害に関する報告書である3).RKに従い睡眠段階を判定するには,睡眠ポリグラフィ(polysomnogra—phy;PSG)による脳波,眼電図,ならびに筋電図の測定が必須であり,また覚醒反応(arousal)の判定を学ぶことも日中眠気過度(excessivedaytime sleepiness;EDS)という閉塞型睡眠時無呼吸低呼吸症候群(obstructive sleep apnea—hypopnea syndrome;OSAHS)の主症状を理解するために不可欠である4).次にICSDを学ぶことは,OSAHSなどの睡眠呼吸障害が睡眠障害(sleep disorders)という広範な病態からみればその一部に過ぎないことを知るのに役立つ.さらにAASMの報告書3)は,睡眠呼吸障害が四つの症候群からなる複雑な病態で,一般に行われている睡眠呼吸障害の診断はなお技術的にレベルが低いことを指摘しており,特に各種モニターの信頼度(gradeA〜D)については誰もが反省させられる.これら三つ(RK, ICSD, AASM)を睡眠医学において学び,三つの大筋を受け入れなければ,睡眠呼吸障害を診断し治療する医師(または臨床検査技師)としてもはや一人前とはいえない状況となってきた.
今回は,心血管系領域における睡眠呼吸障害に関する最近の話題として,その予後決定因子として最も重要と考えられる虚血性心疾患(ischemicheart disease;IHD)の合併,特に新しい話題として閉経後の女性におけるOSAHSとIHDの合併について述べる.また,米国で進行中のSleepHeart Health Study(SHHS)5〜7)の現況についても紹介する.
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