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特集 急性心筋梗塞治療の新展開—心筋保護の観点から
プレコンディショニングを如何に生かすか—臨床的観点から
Preconditioning from Clinical View Point
石原 正治
1
Masaharu Ishihara
1
1社会保険広島市民病院循環器科
1Department of Cardiology, Hiroshima City Hospital
pp.843-847
発行日 2001年9月15日
Published Date 2001/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902341
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臨床におけるischemic preconditioning
1960年頃より高地に住む人では急性心筋梗塞の発生が少ないとの疫学的検討などにより,慢性の低酸素状態が続くと心筋が虚血に対して耐性を生じることが知られていた.1980年代になり臨床の分野で急性心筋梗塞に対する再灌流療法が普及したことを背景として,1986年にMurryらが虚血一再灌流の動物実験において短時間の虚血を先行させると,それに続く長時間の虚血—再灌流による梗塞面積が縮小することを報告し,急性の虚血によっても心筋の虚血耐性の得られることが明らかとなった(ischemic preconditioning)1).
1990年以降,臨床例においてもPTCAや冠動脈バイパス手術の際に動物実験と類似の状況を再現することにより急性の虚血による心筋の虚血耐性が生じることが報告されるようになった.Deutschらは,PTCAの際にバルーンニングを2回以上行うと2回目以降のバルーンニングではST上昇や乳酸産生などを指標とした心筋虚血の程度が軽減することを2),Yellonらは冠動脈バイパス手術では手術の前に短時間の大動脈遮断を行い一過性の虚血を生じさせると,手術中の大動脈遮断による心筋内high energy phosphateの低下が抑制されることを報告し3),臨床例においてもischemic preconditioningの生じ得ることが明らかとなった(表1).
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