Japanese
English
特集 耐性菌呼吸器感染症の現状と治療
緑膿菌感染症—その難治化要因をめぐって
Respiratory Infection due to Pseudomonas aeruginosa:Especially its intractable factors
小林 治
1
,
有賀 晴之
1
,
太田見 さつき
1
,
小林 宏行
1
Osamu Kobayashi
1
,
Haruyuki Ariga
1
,
Satsuki Ohotami
1
,
Hiroyuki Kobayashi
1
1杏林大学医学部第一内科
1The First Department of Internal Medicine, Kyorin University, School of Medicine
pp.731-737
発行日 2001年8月15日
Published Date 2001/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902326
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はじめに
緑膿菌Pseudomonas aeruginosaは広く自然界に分布し,またヒトや動物の腸管内にも常在しているブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌である.一般にその病原性は強くなく,臨床面ではoppor—tunistic pathogenとして位置づけられている.診療面で本菌が注目視されはじめたのは1970年頃,すなわち抗菌剤の進歩によりグラム陽性菌感染症が減少の兆がみえ,かつ同時に医原性ともいえるcompromised hostの増加傾向が出現した時期と一致する.
本菌はヒトの生活環境に密接していることから,急性感染症としては熱傷患者での創感染と,これに引き続く敗血症,immuno compromisedhostにおける肺炎,カテーテル留置例における敗血症など院内感染菌として,あるいは菌交代症などである.一方,慢性感染症としては主として感染を伴った気管支拡張症,cystic fibrosisやびまん性汎細気管支炎などである.本菌による感染発症にはいずれも宿主背景に負の要因が存在することが多く,かつ確実な殺菌作用を有する抗菌剤もないことから,今日もその感染発症,臨床経過,治療面では特に有意な変化はない.
したがって,本稿では呼吸器緑膿菌感染症で臨床的にみられる負の要因について,われわれなりの角度から取り上げ,近い将来における本症の対策に資してみたい.
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