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はじめに
現在,喘息はアレルギー性炎症を基盤とした疾患として理解され,抗炎症作用に優れた吸入ステロイドを中心とした治療が行われ,以前に比べて良好なコントロールを得ている.そして喘息を合併した妊婦においても同様に,吸入ステロイドを中心とした安全とされる薬剤を使用した治療を行い,発作の出現を防ぐことが母体と胎児にとって安全な結果につながるものと考えられている.しかし,最近の報告は健常人の妊娠に比べ喘息患者の妊娠にリスクの存在することを指摘している1,2).さらに喘息の罹患率は年々上昇傾向にあり,現在3〜4%前後となってきており,当然ながら喘息を合併する妊婦の比率も高まっており,より安全な妊娠となるように,さらなる努力が必要な状況である.
さて,喘息治療のガイドラインは各国で作成されているが,妊娠時の治療に関する記載は少ない.喘息と妊娠についてのガイドラインとしては,米国の国立心・肺・血液研究所(NHLBI)が中心となり,全米喘息教育プログラム(the NationalAsthma Education Program;NAEP)の喘息と妊娠に関する各領域の専門家12名からなるワーキンググループが作成し,1993年に出版された「妊娠中の喘息管理ガイドライン」3)(要約日本語版4))が主なもので,1997年に発表されたNIHの「喘息の診断と治療のガイドライン」5)でも,妊娠と喘息に関しては上記ガイドラインを参照するよう記載されている.しかし,ここ数年間に新しい喘息治療薬がいくつか登場しており,これらの新薬の妊娠中の使用に対する評価がThe AmericanCollege of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)とThe American College of Allergy,Asthma and Immunology(ACAAI)の合同委員会(ACAAI-ACOG)によりなされ,2000年4月に「ACAAI-ACOG position statement6)」の形で勧告された.
本稿では,さらに厚生省免疫・アレルギー研究班が作成した「喘息予防・管理ガイドライン1998改訂版」7)なども参考にして,気管支喘息と妊娠について述べる.
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